不動産をめぐる法律トラブル①

昨年後半から、不動産をめぐるトラブルのご相談、受任が多くなっております(マンション問題のご相談はずっと多いのですが、マンション以外の不動産トラブルのご相談も増えています。)ので不動産トラブルについて何回かに分けてちょっとQ&Aにして整理してみたいと思います。

 

Q 家賃を支払わない賃借人がいて困っています。賃貸借契約書には、家賃を滞納した場合には契約を解除できると記載されていますので、契約を解除して出ていってもらうことはできるのでしょうか?

 

A 賃貸借契約では、賃借人は賃貸人に対し家賃を支払う義務を負っていますので、滞納があれば債務不履行となります。そして、本ケースにおける賃貸借契約書によれば、家賃の滞納があった場合には契約を解除できることになりそうです。しかし、以下に説明する信頼関係破壊の法理の存在により、賃貸借契約の解除はそう簡単には認められません。

信頼関係破壊の法理とは、賃貸借契約のように継続性があり当事者間の高度な信頼関係を基礎とする契約においては、当事者間の信頼関係を破壊したといえる程度の債務不履行がなければ契約を解除することはできないという法理です。単発の契約ではなく、継続的な契約をしようと考える場合、その両当事者は、互いに高度な信頼関係を有していると考えているのが通常です。にもかかわらず、少々の債務不履行があっただけで契約を解除できるとすると、契約を継続的に存続させたいという両当事者の合理的意思に反します。そのために、賃貸借契約のような継続的な契約の場合には、信頼関係が破壊されるほどの重大な債務不履行がある場合にのみ契約が解除できるとされているのです。この信頼関係破壊の法理は、法律に明記されてはおりませんが、判例・実務で広く認められている考え方です。

この法理によれば、滞納が1か月あったくらいでは契約解除・明渡は認められず、3か月から6か月くらいの滞納があって(信頼関係が破壊されたかどうかは、賃料の滞納期間だけでなくその他の要素も総合的に判断されます。そのため、何か月までは滞納しても良い、何か月を過ぎると解除が認められるという定型的なものではありません。)初めて解除が認められることになります。本ケースでも、滞納につき賃借人に支払を催告し、それでも何か月にもわたって賃料を支払って来ない場合に初めて解除・明渡が認められることになります。

賃貸人の立場から考えれば、契約書に解除できると書かれているにもかかわらず解除できない訳ですからこれは思わぬ落とし穴です。賃料滞納があった場合には、早期に弁護士に相談するなどして、解除までの見通しを立てておくことが重要となります。

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