テレビ業界の労務管理⑥(芸能プロダクション)

芸能プロダクションでは、タレントを集める方法として昔からスカウトが有名ですが、自社で養成スクールを持って見込みのある生徒をデビューさせるという方法もあります。今日は養成スクールで起こり得る問題について考えてみます。

養成スクールの先生は、多くはタレントか、タレントを目指して裏方に回った方々です。(大きなお笑い芸人の養成事務所などは別ですが、)大半はプロダクションに雇われた先生ではなく、フリーランスで、タレント業等の合間に先生をしています。この先生達とプロダクションの間の関係には、多くの問題があります。

まず、演技でも歌でも笑いでも、基本的にはセンスが重要であり、先生が何を指導するか、生徒に何を身につけてもらうかがはっきりしないということです。要するに正解がないのです。そうすると、先生が勝手な指導をしていると生徒からクレームが入っても、プロダクションは指導注意することが難しくなります。先生の一見すると身勝手な指導が正解かも知れないからです。

先生の指導がおかしいといって、生徒が大量にやめてしまい、数十万、数百万の受講料を返還しなければならなくなるということも考えられます。その場合にも、先生に何をどう指導してほしいのかがはっきり決まっていなければ、先生の契約違反を問えず、損害賠償請求することもできません。

他にも、例えば先生が生徒に手を出してしまった場合などはどうでしょう。生徒たちにとっては先生は基本的に憧れる対象ですから、これもあり得るケースです。関係が上手くいっていれば良いですが、先生と生徒の関係がこじれてしまったら問題になります。生徒や生徒の親から、先生だけでなくプロダクションが責任を追及される可能性があります。プロダクションはもともと先生を雇っていないのですから、立場上、先生を指導するというのは難しいですが、責任追及の場面では、雇っていないフリーランスの先生なのでという理屈は通用しない場合もあります。

こういった問題が起こらないように、プロダクションと先生の契約では、指導内容や禁止事項を明確に定め、特に生徒に対する責任を、初期の段階で先生に自覚させておくことが重要です。また、そもそもの先生の人選という段階から、上記のようなリスクを想定しながら行っていく必要があると考えます。