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テレビ業界の労務管理③

長時間・不規則勤務が当たり前のテレビ番組制作の現場では、スタッフの勤務時間を管理することは困難です。理論上は無理ではないかも知れませんが、実態を知っている者からすれば、生放送の帯番組、スタジオ収録のみでVTRを全く挟まない番組、取材のない番組(料理番組など)以外は不可能と言い切っても良いです。このようなテレビ番組制作の特性に着目して、労働基準法には、スタッフの労働時間を裁量性とする制度が設けられており、専門業務型裁量労働制といいます。

 

専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上その遂行方法を労働者の大幅な裁量に委ねる必要性があるため、業務遂行の手段および時間配分につき具体的指示をすることが困難な一定の専門的業務に適用されるものであり、その対象となる専門的業務とは、研究開発、情報処理システムの分析・設計業務、デザイナー、我々弁護士をはじめとする各士業、そしてテレビのプロデューサーやディレクター等です。

この制度を用いれば、スタッフの勤務時間は、各自の裁量に委ねるということとなり、会社が勤務時間を管理する必要がなくなります。スタッフ側からみれば、自由な時間に仕事をすることができますし、会社側からみれば上手く用いれば残業、深夜、休日の割増賃金を抑えられるかも知れません。

 

しかし、この専門業務型裁量労働制は、テレビ番組制作の実態に照らすと、採用することはほぼ不可能です。

「裁量」労働制なわけですから、スタッフ側に勤務時間についての裁量が与えられなければなりませんが、まずADであればディレクターの命令を受けてなんぼな訳ですから、ディレクターが働いている時間は常にいなければならないので、勤務時間の裁量などあるはずがありません。次に、ディレクターは編集作業の過程でプロの編集スタッフ、美術スタッフ、音効さんらと一緒に作業を行う必要がありますし、(私がテレビ業界にいた時代と比べると、ほとんどの編集作業が自宅のパソコンでできてしまうくらい進化しているものの、それでもこういった作業が全く存在しない訳ではありません。)、プロデューサー、作家や演出家のチェックを受けるので、実際にはほとんど裁量はありません。プロデューサーにしても、ディレクターと立場は違うものの自由な時間に勤務することなどできません。

このような実態に照らすと、正直言って、専門業務型裁量労働制の業種の中になぜテレビのディレクターやプロデューサーが含まれているのか全然分かりません。

テレビの現場は、専門業務型裁量労働制が実態に見合っていない制度であることを理解しているので、専門業務型裁量労働制をとらずに対応している会社が多いのが現状です。

 

このように、テレビ番組制作においては、専門業務型裁量労働制を用いることは難しいので、やはり通常会社と同じような勤務時間管理が求められます。

冒頭に述べたとおりこれは非常に難しいのですが、だからこそ現場を多少なりとも知っている私のような者が取り組まなければならないとも思っています。

具体的には、取材・編集の場面毎に考えなければなりませんが、せっかくこれだけスマホが普及し、グループLINEなど便利なものがある(記録にも残るし、既読・未読が分かる)ので、プロデューサー、ディレクター、ADの間の指揮命令、具体的な進捗の報告、現場で作業が終了し解散する場合の報告、勤務時間外には逆にそのグループLINEを用いないようにするなどして、全て一本化して行うというのが一つのヒントだと考えています。

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