大型犬によるポメラニアン襲撃事件について

今月、札幌市豊平区で、飼い主がポメラニアン3匹を連れて散歩中に大型犬ジャーマンシェパードが襲いかかり、ポメラニアンと飼い主を負傷させるという事件が起こりました。大型犬の飼い主は現場から逃げ、現在も名乗り出ていません。この事件で、テレビの情報番組から取材を受けて回答したのでここでも紹介していきます。

この事件では、警察は札幌市畜犬条例の、飼い犬が人を襲った場合には市長に届出をしなければならないという規定に違反したものとして捜査を進めているようですが、この条例違反の罰則は5万円以下の罰金又は科料です。一般的な感覚からするとこれは軽すぎるような気がしますよね?今回の事件で大型犬の飼い主がどこまで責任を負うかは何とも言えないところですが、一般的な飼い主の責任につき説明していきたいと思います。

まず、誰かが飼っている犬をケガさせた場合、刑法上、犬は飼い主の物として扱われるので、器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金科料)が成立する可能性があります(もっとも、今回の事件では、大型犬の飼い主が意図して大型犬を使ってポメラニアンを襲わせたものかどうかが分かりません。仮に意図してやったものではない場合には、犯罪の故意がないため器物損壊罪は成立しません)。他にも、動物愛護法には愛護動物をみだりに殺したり傷つけたりしてはならないとする規定があり(2年以下の懲役又は200万円以下の罰金)、同規定に違反する可能性もあります(同法違反も、器物損壊罪同様、意図してやったものでなければ成立しません)。

次に、ペットの犬が人を負傷させた場合の飼い主の責任ですが、刑法上の傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が成立する可能性があります。もっとも、傷害罪も器物損壊罪同様、意図してやったものでなければ成立しません。しかし、器物損壊罪とは違い傷害罪の場合、意図してやったものでなくても、過失傷害罪(30万円以下の罰金科料)という犯罪も定められており、こちらが成立する可能性があります(今回の事件では、飼い主の散歩中の大型犬の管理に問題があったのであれば過失傷害が成立することは十分に考えられます)。

また、罪に問われるかどうかとは別に、飼い主は民事上の損害賠償責任(動物の占有者の責任)を負うことになります。その場合の損害賠償の範囲は事案によりますが、高額になることも考えられます。ペットが人に噛みついて重傷を負わせてしまった場合、まずはその治療費を賠償しなければなりません。次に、もしもその負傷によって被害者が仕事を何か月も休まなければならなくなった場合にはその分の休業損害も発生します。また、負傷の程度が重く後遺症が残ってしまいそれ以後十分な仕事ができなくなり収入の減少が見込まれる場合には、将来的に後遺症がなければ得られたはずの利益も逸失利益として損害になります。他にも、治療の入通院や後遺症が残ってしまった精神的苦痛に対する慰謝料も発生します。数万円から数10万円程度の額では済まず、場合によっては損害の総額は数千万円から1億円を超えることもあります。そのようなケースに備えて損害賠償保険もあるほどです。

以上のとおり、飼い主の責任は、条例による管理責任、刑事責任、民事の損害賠償責任があり、今回の事件でも、現在報道されているのは条例違反のみですが、飼い主に過失傷害罪が成立したり民事上の損害賠償責任が発生する可能性は十分にあります。飼い主の法的責任は決して軽いものではありません。

また、管理が行き届いていないペットを飼っているということはそれだけで近隣住民に不安を与えており、飼い主は、この点につき社会的責任も負っています。この点は現行の法律では十分に裁けないものの、社会的責任を負うのは間違いなく、今回全国放送のテレビで大きく報道されたことからも分かるとおり、世間の関心は高く、その責任は重大です。今回の事件が起こった札幌市豊平区は、昨年の12月まで私が住んでいた場所であり、事件現場もよく知っている場所です。近くに広い公園があり犬を連れて散歩する方々も多く、その方々は今も大型犬への不安を抱えているはずです。大型犬の飼い主には、法的責任もそうですが、社会的責任という点からも、しっかりと管理をしてもらわなければなりません。

 

city-lawoffice.com