AD時代のこと⑤

ADの重要な業務の1つにテロップ入れがあります。テロップ入れの仕事について、日テレで放送中のGoing!Sports&Newsという番組(私がかつて担当していたスポーツうるぐすの後身番組)を例にとって説明していきます。

まず、その日のニュースで使うことになるテロップを技術担当に発注します。テロップの内容は「上田晋也」「亀梨和也」など出演者の名前のテロップや「巨人5×4ヤクルト」など試合の経過や結果などが中心で、全部で50枚~80枚くらいになることが多いように思います。発注作業は、紙に鉛筆で書くだけなので美的センスみたいなものは一切問われず、そういうことは技術担当者が考えてうまくやってくれます。発注の上で重要なのは、選手の名前や年齢、試合経過や結果の数字を間違えないことです。特に年齢などは注意しておかないと誕生日がきていて1歳違っていたなどということになりがちです。間違えると本番中にアナウンサーが謝らなければならないですし、AD的には後で偉い人に怒られてしまいます。

発注したテロップは、出来上がるとサブ室(スタジオではなく、モニターや機材がいっぱいある暗い部屋で、その日回しているカメラの映像全てがモニターに映し出され、ディレクターがインカムマイクをつけて指示を出したり、タイムキーパーが時間を数えたり、音楽効果担当が音を入れたりする部屋。)にあるテロップ用の機械(名前は分かりませんが「テロップ機」とでも呼びます。)にそのデータが入ります。テロップ機にはパソコンでいうところのキーボード的なものがついています。キーボードの数字1を押すと発注したあるテロップが、2を押すと別のテロップが出てきます。キーボードを押すと、生放送のテレビ画面にテロップが入るという仕組みです。ADは、構成作家やディレクターが作った台本を見ながら、用意したテロップを出すタイミングや順番を把握し、キーボードのどの数字を押したら必要なテロップが出るかを本番前にチェックしておきます。

生放送本番が始まると、サブ室でモニター画面を見ながら、チェックしたテロップを間違えないよう、タイミングよくキーボードを押すのが仕事です。例えば、番組が始まって、上田晋也さんが初めてアップになった時には、名前のテロップを入れます。前にも紹介したかもしれませんが、アップになった瞬間にテロップを入れるのは不自然で、アップになって1秒弱くらいしたときに入れるのがきれいです。

テロップ入れは、初めはかなり緊張するものの、作業内容としては説明してきたとおりであり単純作業なのでそんなに難しくはありません。ただ、生放送のテレビ特有の難しさがあります。生放送の番組では本番直前に扱うニュースが変わったり増えたり放送する順番が変わったりしてしまうことが結構あります。そうなると、テロップの中身も順番も変わってしまうので、せっかく入念に準備をしてテロップの情報や台本を頭に入れていても無意味になってしまいます。準備が出来ないままぶっつけ本番で臨まなければならない事態になってしまいます。本番前は、スタジオのセッティングやカメラチェック、台本の微調整など本当に色々なことにみなバタバタしているので、情報が伝達が上手くいかず、最悪の場合、誰かが直前にテロップを追加発注していたことをADに伝えられないまま本番を迎えることもあります。こうなると、単純作業のはずのテロップ入れは劇的に難しくなります。

テロップが直前に増えて順番が変わったことに気付かず1つ間違えてしまうと、記憶していた順番が狂い、その後もミスを連発してしまうことがよくあります。テンパって悪循環に陥ってしまうんです。私もBSのアメフトの番組で1度そんな悪循環にはまったことがありました。今でもテレビを見ていて、テロップが続けて間違っていたりするのを見ると、サブ室内のディレクターの怒号とかADのテンパり具合とかの光景がやけにリアルに浮かんできて、頑張れよ~と画面を通じて応援してしまいます。