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テレビ業界の労務管理⑦(タレントの移籍禁止条項)

芸能プロダクションとタレントの契約では、会社を辞める場合には一定期間タレント活動を禁止するという条項が設けられていることがあります。実質的に移籍を禁止するような条項です。

このような条項を設けることは一律に許されないという訳ではありませんが、職業選択の自由という憲法上の権利を制約するものであるため、許されない、条項は無効となる可能性が高いでしょう(裁判例でも条項を無効としたものがあります)。したがって、移籍を希望するタレントの方々は、上記のような条項を含む契約を交わしてしまった場合でも、そのような条項には拘束されないはずです。

しかし、ここからが問題です。法的には上記のような解釈になるとしても、退社を巡って事務所と揉めてしまった場合、移籍先は見つかるのでしょうか。芸能界、テレビ業界は本当に狭い世界なので、大手プロダクションと揉めてしまった場合には、他のプロダクションは受け入れにくいですし、番組、テレビ局も使いづらいというのが実情です。そうなると、契約条項の法的問題は解決できたとしても、業界の暗黙のルールのようなものを乗り越えられずに移籍ができないということになってしまいます。

この問題は、テレビ業界、芸能界の体質によるものなので完全に解決を図るのは難しいですが、例えば退社時に弁護士を入れる場合などでは、単純に移籍を認めさせるということにとどまらず、その後の不利益な取り扱いをされないというところまで含めてプロダクションと協議し、円満な解決を目指すことが重要になってきます。

 

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先週末に出張で久しぶりに札幌に行ってきました。

ちょうど暖かくなってきたところのようでとても良い陽気でした。夜は当事務所の中村と他事務所の弁護士と3人で食事し、久々に札幌の活いかを食べられて大満足でした。札幌から東京に戻ってきて一番違うと感じるのはいくらでも雲丹でもなく、いかと帆立です。いかも帆立も東京ではペンキで塗ったような真っ白なのやつが出てきますが、札幌のは違います。特にいかは透き通っていて、白ではなく基本は透明でちょっと黄色がかったような色をしています(写真を撮るはずでしたが男3人の食事なので撮影など待てません)。いかも帆立ももともと特別好きという訳ではなく、寿司ネタで言えばその他大勢みたいな脇役扱いでしたが、東京と札幌の大きな違いに気付いてからは、私の中ですっかり主役です。

当事務所中村が、現在創作料理バー出店に向けて奔走しておりますが、是非ともいかと帆立の創作料理の考案を期待しております!

 

テレビ業界の労務管理⑥(芸能プロダクション)

芸能プロダクションでは、タレントを集める方法として昔からスカウトが有名ですが、自社で養成スクールを持って見込みのある生徒をデビューさせるという方法もあります。今日は養成スクールで起こり得る問題について考えてみます。

養成スクールの先生は、多くはタレントか、タレントを目指して裏方に回った方々です。(大きなお笑い芸人の養成事務所などは別ですが、)大半はプロダクションに雇われた先生ではなく、フリーランスで、タレント業等の合間に先生をしています。この先生達とプロダクションの間の関係には、多くの問題があります。

まず、演技でも歌でも笑いでも、基本的にはセンスが重要であり、先生が何を指導するか、生徒に何を身につけてもらうかがはっきりしないということです。要するに正解がないのです。そうすると、先生が勝手な指導をしていると生徒からクレームが入っても、プロダクションは指導注意することが難しくなります。先生の一見すると身勝手な指導が正解かも知れないからです。

先生の指導がおかしいといって、生徒が大量にやめてしまい、数十万、数百万の受講料を返還しなければならなくなるということも考えられます。その場合にも、先生に何をどう指導してほしいのかがはっきり決まっていなければ、先生の契約違反を問えず、損害賠償請求することもできません。

他にも、例えば先生が生徒に手を出してしまった場合などはどうでしょう。生徒たちにとっては先生は基本的に憧れる対象ですから、これもあり得るケースです。関係が上手くいっていれば良いですが、先生と生徒の関係がこじれてしまったら問題になります。生徒や生徒の親から、先生だけでなくプロダクションが責任を追及される可能性があります。プロダクションはもともと先生を雇っていないのですから、立場上、先生を指導するというのは難しいですが、責任追及の場面では、雇っていないフリーランスの先生なのでという理屈は通用しない場合もあります。

こういった問題が起こらないように、プロダクションと先生の契約では、指導内容や禁止事項を明確に定め、特に生徒に対する責任を、初期の段階で先生に自覚させておくことが重要です。また、そもそもの先生の人選という段階から、上記のようなリスクを想定しながら行っていく必要があると考えます。

 


日本プロ野球選手会公認選手代理人に登録しました。

プロ野球好きというのもありますが、前事務所所属時に球団顧問業務を担当させていただいていたので、その経験を生かせると思っての登録です。

海外のサッカー選手などは選手の兄弟が代理人を務めるケースもありますが、日本のプロ野球では代理人に登録できるのは原則として弁護士に限られており、代理人登録者はわずかに240名程度(2010年時点)しかいないそうです。

 

今日からプロ野球開幕ですね。世間はWBCだったかも知れませんが私は断然国内のプロ野球です。山田と秋吉がケガなどせず無事に戻ってきてくれてほっとしてます。広島と横浜が強そうですがヤクルトも新戦力の外国人投手が当たればAクラスはいけると思います。万年Bクラスと言われていたその3球団でのクライマックスが見てみたいですね。

 

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テレビ業界の労務管理⑤(芸能プロダクション)

前回も芸能プロダクションのスタッフの労務管理の難しさを指摘しましたが、労働時間の把握以外にも難しさがあります。

多くの芸能プロダクションでは、タレントが税金対策のために会社を持っていてプロダクションと系列会社のような形にしています。タレントはマネージャーやスタッフに、プロダクションではなく自身の会社の経理の仕事なども任せています。

しかし、タレント個人が持っている会社と経理を担当するそのスタッフとの間には雇用関係はありません。そのスタッフはプロダクションと雇用契約を結んでいるに過ぎないのです。したがって、そのスタッフはタレント個人の会社のことまでしなければならない訳ではないのですが、なんとなくタレントの指示にはしたがうものという頭があるので仕事をしているだけなのです。プロダクションの方も、スタッフがタレント個人の会社の業務を行うことについては特段の意識は持っておらず、むしろ積極的に行わせている場合もあります。

しかし、上記のような関係は、タレントとスタッフの関係が上手くいっているから成り立っているにすぎません。関係性が少しでも悪くなれば、たちまち成り立たなくなるでしょう。成り立たなくなれば、タレント個人が持っている会社は誰が管理するのでしょう。タレント個人は仕訳など、経理の仕事を自らすることはできるのでしょうか。

このような問題が顕在化する前に、スタッフの業務内容につき正確に把握し、整備しておくべきです。プロダクションとの雇用契約の中に、タレントの会社の管理を入れることも可能です。正しい整理を行い、スタッフの業務が無理なく円滑に回るようにしましょう。

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テレビ業界の労務管理④(芸能プロダクション)

SMAP解散ジャニーズ事務所の問題(真偽は不明ですが事務所移籍の問題)、先日の清水富美加の出家騒動など、テレビの世界は番組制作の現場だけでなく芸能プロダクションも多くの労務管理上の問題点を抱えているようです。これだけ頻繁にプロダクションとタレント等の問題が報じられると皆が関心を持つので、今後プロダクションの労務問題はさらに頻繁に起こるのではないかと予想されます。

 おそらくほとんどの事務所では、タレントとの契約は雇用契約ではなく業務委託契約などの形をとっており、雇っているのではなく1人の個人事業者として扱っているのではないかと考えられます(そうでなければ散々働かせて月給数万円というのでは最低賃金を下回り違法となってしまいます)。しかし、このように業務委託契約の形態をとっている場合でも、働き方の実態が一般的な労働者と変わらない場合には、雇用契約をしていなくてもそのタレントは「労働者」として扱われます(実際に昨年厚生労働省労働基準局が同旨の文書を各種芸能関係の団体に送付しています)。そうすると、清水富美加が実際にどうであったかは分かりませんが、仕事を選べない若手の芸人、モデル、アイドルなどは、事務所の指揮命令に従って仕事をしていますので、多くのケースで「労働者」と判断されることになるのではないでしょうか。そうなると、仕事を選べないタレントは選べるタレントよりも圧倒的に多い訳ですから、多くのプロダクションで労使トラブル、法的紛争が多発するリスクがあるということです。芸能界は人気商売ですから、タレントとの法的紛争はプロダクションにとって即、致命傷になる可能性もあります。そうなってしまう前に、今のうちにタレント(マネージャーらスタッフも)の働かせ方や待遇を見直し、 労務管理の体制を整え、紛争リスクを抑えましょう。

 

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テレビ業界の労務管理③

長時間・不規則勤務が当たり前のテレビ番組制作の現場では、スタッフの勤務時間を管理することは困難です。理論上は無理ではないかも知れませんが、実態を知っている者からすれば、生放送の帯番組、スタジオ収録のみでVTRを全く挟まない番組、取材のない番組(料理番組など)以外は不可能と言い切っても良いです。このようなテレビ番組制作の特性に着目して、労働基準法には、スタッフの労働時間を裁量性とする制度が設けられており、専門業務型裁量労働制といいます。

 

専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上その遂行方法を労働者の大幅な裁量に委ねる必要性があるため、業務遂行の手段および時間配分につき具体的指示をすることが困難な一定の専門的業務に適用されるものであり、その対象となる専門的業務とは、研究開発、情報処理システムの分析・設計業務、デザイナー、我々弁護士をはじめとする各士業、そしてテレビのプロデューサーやディレクター等です。

この制度を用いれば、スタッフの勤務時間は、各自の裁量に委ねるということとなり、会社が勤務時間を管理する必要がなくなります。スタッフ側からみれば、自由な時間に仕事をすることができますし、会社側からみれば上手く用いれば残業、深夜、休日の割増賃金を抑えられるかも知れません。

 

しかし、この専門業務型裁量労働制は、テレビ番組制作の実態に照らすと、採用することはほぼ不可能です。

「裁量」労働制なわけですから、スタッフ側に勤務時間についての裁量が与えられなければなりませんが、まずADであればディレクターの命令を受けてなんぼな訳ですから、ディレクターが働いている時間は常にいなければならないので、勤務時間の裁量などあるはずがありません。次に、ディレクターは編集作業の過程でプロの編集スタッフ、美術スタッフ、音効さんらと一緒に作業を行う必要がありますし、(私がテレビ業界にいた時代と比べると、ほとんどの編集作業が自宅のパソコンでできてしまうくらい進化しているものの、それでもこういった作業が全く存在しない訳ではありません。)、プロデューサー、作家や演出家のチェックを受けるので、実際にはほとんど裁量はありません。プロデューサーにしても、ディレクターと立場は違うものの自由な時間に勤務することなどできません。

このような実態に照らすと、正直言って、専門業務型裁量労働制の業種の中になぜテレビのディレクターやプロデューサーが含まれているのか全然分かりません。

テレビの現場は、専門業務型裁量労働制が実態に見合っていない制度であることを理解しているので、専門業務型裁量労働制をとらずに対応している会社が多いのが現状です。

 

このように、テレビ番組制作においては、専門業務型裁量労働制を用いることは難しいので、やはり通常会社と同じような勤務時間管理が求められます。

冒頭に述べたとおりこれは非常に難しいのですが、だからこそ現場を多少なりとも知っている私のような者が取り組まなければならないとも思っています。

具体的には、取材・編集の場面毎に考えなければなりませんが、せっかくこれだけスマホが普及し、グループLINEなど便利なものがある(記録にも残るし、既読・未読が分かる)ので、プロデューサー、ディレクター、ADの間の指揮命令、具体的な進捗の報告、現場で作業が終了し解散する場合の報告、勤務時間外には逆にそのグループLINEを用いないようにするなどして、全て一本化して行うというのが一つのヒントだと考えています。

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